正月は実家にDVDを持っていって、大画面テレビでいろいろ映画を見ましたが、その中で「クラッシュ」と言う映画が一番面白かったです。
この映画は2004年、「ブロークバックマウンテン」を抑えて作品賞に輝いた作品だそうです。監督は「ミリオンダラーベイビー」の脚本で脚光を浴びたポールハギスです。
舞台となるのは人種の坩堝、ロサンゼルス。白人、黒人、ヒスパニックにアジア系と、あらゆる出自を持つ人々の人生が交錯する街。白人の検事夫妻、黒人刑事とその恋人で相棒のヒスパニック系女性刑事、雑貨商を営むペルシャ人親子、テレビプロデューサーの黒人夫婦、見た目は強面だけど娘思いのメキシコ人鍵職人、人種差別主義者の白人警官、黒人のチンピラ自動車強盗など、本来交わるはずの無い彼らの人生が、ふとしたきっかけからぶつかり合い”クラッシュ”を引き起こします。
人種問題をテーマに扱った群像劇です。ロサンゼルスで起こったある事件の前後48時間ほどの間に起こる出来事をつなぎあわせていく構成になっています。いろんな人種の人々が登場し、彼らの日常の一コマを切り取っていきますが、一見なんの関係もなさそうな彼らの人生が交錯する様を描きながら、アメリカの抱える人種差別の問題を浮き彫りにしていきます。人種問題と言う難しい問題を扱いながら、変に説教臭くなることも無く、エンターテインメントとしてちゃんと成立しているところが凄いところですね。
これは監督のポールハギスの人種問題を捉える視点によるところが大きいと思います。彼は人種問題をあくまでも相対的な視点で捉え、差別する側、される側と言う単純な二項対立を退けます。差別する者とされる者と言うk別は無く、他者に向けられた漠然とした、しかしはっきりとした敵意がそこにはあるだけです。
劇中、サンドラブロック演じる検事の妻が「自分はいつも何かに怒っている、だけど怒りの理由は自分にもよく解らない」と言う台詞をつぶやきますが、異質な他者に囲まれ、常に敵意を発散しながら神経をすり減らし、次第に寛容さを無くしていく現代人の姿を象徴的に現していると思いました。
かく言う僕も先月アメリカに行きましたが、ホテル前の路上に黒人がたむろして、でっかいラジカセを小脇でガンガン鳴らしながら、"Hey,Me~n, HA-HAHAHAHA"とかなんとか大声で騒いでみるのを見た日には、さすがに「アメリカ怖ぇー」と密かに思いましたからね。異質な他者に対する許容量というのは自分で思っているより狭いのかも知れません。
そんな殺伐とした世の中では、何かにすがりたくなるのが人情ですね。人種や民族、文化の違いと沿うように、あるいはそれ以上に宗教の違いも現代においてはややこしい問題を抱えていますが、人種問題を扱うこの映画の中でも宗教が重要な意味を持つ者として扱われています。しかし、この監督さんは宗教を肯定的に捉えているようです。ここでもあくまで象徴的にそれとなく示されているだけですが、その見せ方はなかなか印象深く巧妙です。描かれるのがクリスマス前後の48時間と言うところからして象徴的ですね。
さて、一見なんの関係もなさそうな話が徐々につながっていくところがこの手の群像劇の醍醐味になります。その点、この映画の脚本は話のばらけ具合とまとまり具合の塩梅が絶妙です。最初脈絡の無かったエピソードが、冒頭の主人公の台詞にピタリと収斂していくところはお見事としか言いようがありません。見事な脚本だなあと感心していたら、脚本も書いている監督のポールハギスはミリオンダラーベイビーの脚本も書いているんですね。話作りが上手いのも納得です。しかし話の筋についてはあれこれ言ってもネタバレするだけで興ざめでしょうから、これ以上は何も申しません。とにかくアカデミー作品、脚本、編集の3賞獲得の実力は伊達じゃないと保証します。見て絶対損なしの作品ですので、是非ご覧ください。
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この映画は2004年、「ブロークバックマウンテン」を抑えて作品賞に輝いた作品だそうです。監督は「ミリオンダラーベイビー」の脚本で脚光を浴びたポールハギスです。
舞台となるのは人種の坩堝、ロサンゼルス。白人、黒人、ヒスパニックにアジア系と、あらゆる出自を持つ人々の人生が交錯する街。白人の検事夫妻、黒人刑事とその恋人で相棒のヒスパニック系女性刑事、雑貨商を営むペルシャ人親子、テレビプロデューサーの黒人夫婦、見た目は強面だけど娘思いのメキシコ人鍵職人、人種差別主義者の白人警官、黒人のチンピラ自動車強盗など、本来交わるはずの無い彼らの人生が、ふとしたきっかけからぶつかり合い”クラッシュ”を引き起こします。
人種問題をテーマに扱った群像劇です。ロサンゼルスで起こったある事件の前後48時間ほどの間に起こる出来事をつなぎあわせていく構成になっています。いろんな人種の人々が登場し、彼らの日常の一コマを切り取っていきますが、一見なんの関係もなさそうな彼らの人生が交錯する様を描きながら、アメリカの抱える人種差別の問題を浮き彫りにしていきます。人種問題と言う難しい問題を扱いながら、変に説教臭くなることも無く、エンターテインメントとしてちゃんと成立しているところが凄いところですね。
これは監督のポールハギスの人種問題を捉える視点によるところが大きいと思います。彼は人種問題をあくまでも相対的な視点で捉え、差別する側、される側と言う単純な二項対立を退けます。差別する者とされる者と言うk別は無く、他者に向けられた漠然とした、しかしはっきりとした敵意がそこにはあるだけです。
劇中、サンドラブロック演じる検事の妻が「自分はいつも何かに怒っている、だけど怒りの理由は自分にもよく解らない」と言う台詞をつぶやきますが、異質な他者に囲まれ、常に敵意を発散しながら神経をすり減らし、次第に寛容さを無くしていく現代人の姿を象徴的に現していると思いました。
かく言う僕も先月アメリカに行きましたが、ホテル前の路上に黒人がたむろして、でっかいラジカセを小脇でガンガン鳴らしながら、"Hey,Me~n, HA-HAHAHAHA"とかなんとか大声で騒いでみるのを見た日には、さすがに「アメリカ怖ぇー」と密かに思いましたからね。異質な他者に対する許容量というのは自分で思っているより狭いのかも知れません。
そんな殺伐とした世の中では、何かにすがりたくなるのが人情ですね。人種や民族、文化の違いと沿うように、あるいはそれ以上に宗教の違いも現代においてはややこしい問題を抱えていますが、人種問題を扱うこの映画の中でも宗教が重要な意味を持つ者として扱われています。しかし、この監督さんは宗教を肯定的に捉えているようです。ここでもあくまで象徴的にそれとなく示されているだけですが、その見せ方はなかなか印象深く巧妙です。描かれるのがクリスマス前後の48時間と言うところからして象徴的ですね。
さて、一見なんの関係もなさそうな話が徐々につながっていくところがこの手の群像劇の醍醐味になります。その点、この映画の脚本は話のばらけ具合とまとまり具合の塩梅が絶妙です。最初脈絡の無かったエピソードが、冒頭の主人公の台詞にピタリと収斂していくところはお見事としか言いようがありません。見事な脚本だなあと感心していたら、脚本も書いている監督のポールハギスはミリオンダラーベイビーの脚本も書いているんですね。話作りが上手いのも納得です。しかし話の筋についてはあれこれ言ってもネタバレするだけで興ざめでしょうから、これ以上は何も申しません。とにかくアカデミー作品、脚本、編集の3賞獲得の実力は伊達じゃないと保証します。見て絶対損なしの作品ですので、是非ご覧ください。
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